《MUMEI》
銀色の光
「…嘘」

晶が消えたなんて。

「ゆき」


「嘘! …そんなの嘘よ!」


私は紗己さんの手を振り払い、立ち上がった。


しかし、今まで寝ていたせいか、めまいがしてすぐにその場に座り込む。


「晶…どこ?」


私は四つん這いになり、まるで犬猫のように、移動し始めた。

…暗闇の中では立って歩く事すら困難だった。


ゴンッ


「…痛っ」


頭をぶつけた。


手探りで、何だろうと触っていると…


ビリッ


指が紙を突き破った。

障子貼りのふすまだ。


私はそこを開け、更に進もうとした。


「駄目よ、ゆき。危ないわ」


後ろから紗己さんが私の体を押さえた。

元々紗己さんは私より背が高い。

その上、私はずっと眠っていたから、筋力も落ちていた。


「離して、紗己さん!」


身動きのとれない私は必死で訴えた。


「…駄目よ。お願い、大人しくして」


紗己さんは小さな子供をあやすように、私の頭を撫でながら、優しくさとした。
その声は、震えていた。


「…晶を探しに行きたいの」


私は控え目に頼んでみた。

「ゆき、晶君は、…もう」
「行きたいの、お願い、紗己さん」

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