《MUMEI》 紗己さんの言葉を遮って、私は頼んだ。 「ゆき…」 「晶がどこにもいないなんて、そんな…」 『信じられない』と言おうとした時。 廊下を見つめていた私は… 銀色に輝く光を見つけた。 (晶だ!) 暗闇に光る銀色の光は、ゆっくりと私達の前に移動し 止まった。 「晶!」 私は、紗己さんの腕の中で暴れた。 「ゆ…き?」 不意に、紗己さんの力が緩んだ。 その隙に、私は紗己さんから離れ、晶に向かってしがみついた。 「良かった…」 這いずりながら銀色の光にしがみつくと、確かに両足の感触があった。 「晶が、無事で良かった!」 私は顔を上げて笑顔で言った。 なのに。 「…晶?」 「…」 晶は何も言わない。 「どうしたの? 晶?」 いつものように、早く私を『主』と呼んでほしいのに。 優しく抱き締めてほしいのに。 晶はさっきから、ピクリとも動かない。 (それに、何となく…) しがみついた両足に違和感があった。 「晶…痩せた? もしかして、私のせい?」 逞しいはずの晶にしては、両足が細い気がした。 前へ |次へ |
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