《MUMEI》
到着
レッカは走りながらキョロキョロと周りを見渡す。
副長を探しているのだろう。

「いた?」

もうすでに限界を過ぎている羽田の代わりに凜が聞いた。
しかし、レッカは困ったように首を振る。

「……どうするの?」

若干の苛立ちを込めた口調で凜は言う。

「いやー、どうって……」

さらに困った顔でレッカは上を見上げた。

そういえば、さっきから攻撃が止んでいたのだ。
羽田は倒れそうになりながら、同じように視線を上げる。

「……うそ」

ようやく絞り出した自分の声が遠くに聞こえる。
見上げた空には、まるで雨雲のように薄黒く変色したマボロシが、いつの間にか再び一つにまとまり、さらに巨大化して三人をすっぽり覆っていた。

「これ、やばいんじゃないの?」

「みたいだな。いいか、絶対、止まるなよ?どっか建物に入れば大丈夫だ」

「屋根、溶かされるんじゃない?」

「そんなネガティブに考えるなよ。少しは時間稼ぎになるだろ?」

「この状況で時間稼いでもしょうがないでしょ。それより、その副長っていうの、探して」

「いや、わかってるけど……」

レッカと凜が言い合っている間に、三人は鉄塔の真下に到着した。

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