《MUMEI》 紗己さんはそう言って、私の着ているゆかたのような寝間着を直してくれた。 気付かなかったが、動き回ってかなりはだけていたようだ。 (紗己さんと晶しかいなくて良かった) よくわからないが、今のところは二人しかいないようだったから、安心した。 それから紗己さんは手を引いて、私を布団まで導いてくれた。 「まだ少し、熱があるみたいね」 紗己さんの手の平が、私の額に触れた。 (冷たくて、気持ちいい) 手の冷たい人は、心が温かいというのは本当なんだなと思った。 それから、紗己さんは私の頭を持ち上げた。 元の位置に戻ると、後頭部がひんやりした。 多分、氷まくらだ。 「…私が来るまで、横になっていてね」 「うん。ありがとう、紗己さん」 私は、右手を上げた。 その手を、紗己さんが握ってくれた。 「…紗己さん」 私は紗己さんの手をギュッと握り返した。 「ん?」 「晶の事、お願いね」 「…」 「紗己さん?」 返事が無いので私は心配になった。 体を起こそうとした時、紗己さんはやっと口を開いた。 「…わかったわ ここで、待っててね」 ―と。 前へ |次へ |
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