《MUMEI》
試練
「とりあえず、隣に行きましょうか」

ゆきが横になったのを確認して、紗己は廊下で固まっている人物に声をかけた。
ゆっくりと、移動を始めた人物に足早に近付くと、紗己は小声で告げた。


「部屋に入るまで声を出さないでね。

あなたの正体がゆきにバレたら大変だから」


―と。


その人物―

神は深く頷いた。


紗己は部屋に入る前に、周囲を確認してから、ふすまを閉じた。


「信じたくないけど、本当に、あなたの中に晶君がいるのね」


紗己はため息をついた。

ゆきの世話役を任された時、晶が人間ではないと聞かされていたが、紗己は全く実感がわかなかった。

一番人間と違うところは、食事をしないという点だけだった。

『晶が消えて、その力は金色の男に、記憶は俺に与えられた』

そんな非現実な事が起こるなんて、紗己には信じられなかった。

しかし、ゆきは確かに神の中の晶に反応した。


「さっき見ててわかると思うけど、ゆきは目が見えないの」

「みたいだな」


四つん這いになって移動していたゆきの乱れた姿を神は思い出した。

薄い衣から、豊満な胸の谷間が大きく見えても、太ももが見えてもゆきは気にしていなかった。

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