《MUMEI》 もしゆきの目が見えていたら、真っ赤になって慌てていただろう。 まして、そんな姿のまま神に近付き、両足に自らしがみつくなど、ありえない事だ。 ゆきが見つめているのは 笑顔を向けるのは 側にいてほしいのは 神ではなく、神の中の晶なのだ。 「ゆきには、あなたの中の晶君だけは、見えているみたいなの」 「…そのようだな」 それだけ、ゆきは晶を必要としている。 逆にいえば、晶以外は拒絶している。 姿も景色も見たくないのだ。 その最たる者は自分だろうと、神は自覚していた。 怒鳴って罵って憎んでくれた方が、まだ良かった。 それは、ゆきが神を見ている証拠だから。 今のゆきは、神を全く見ていない。 見たくもない。 ゆきが見ているのは、神の中の晶だけなのだ。 覚悟したはずなのに、その事実は神の胸に突き刺さった。 しかし、もう後戻りは出来ない。 神は、この試練に立ち向かわなければならない。 たとえ、ゆきが自分を見る事が無くても ゆきを守る。 それが、神の償いだった。 「あなたが側にいないと、ゆきはまた暴れだすし…」 紗己は条件付きで神がゆきの側にいる事を渋々認めた。 前へ |次へ |
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