《MUMEI》
衝撃
部屋を出てから一時間くらいして、鈴木が暗ぁい顔をして戻ってきた。


「大丈夫?すっごいヒドイ顔してるけど…」


鈴木は唇を噛んで、不自然に笑い口を開いた。


「詩織…妊娠してたんだって…」


に、にんしん!?


地味な生活の美樹子には縁のない言葉で動揺した。


「だから今日、病院で堕ろしたって…」


堕ろした…


「その報告の電話だった」


超ヘビィー


なんて声をかけたら良いのか…言葉が見つからない。

鈴木もそれ以上は何も言わず黙っている。





沈黙が5分ほど続いて、美樹子は耐えれず聞いた。


「今日まで相談はなかったの?」


「あったら産めって言ってるよ!」


鈴木にしては珍しく感情的に強く言い返してきた。


「そうよね…ごめん」


また沈黙が始まる。





「なんで相談してくれなかったんだろうね…詩織さん」


またもや沈黙に耐えれず、無神経なことを聞いてしまった。


「……もう、別れたつもりだったらしい…」


「距離を置いてるだけじゃなかったの?」


素朴な疑問をぶつけてみた。


「ただ単に意地張ってたんだろ、どうせ…」


「意地…?」


「意地張って堕ろして、でも耐えれなくて電話してきたんだよ、あいつ…」


なんか…複雑だなぁ…


「そんな女、許せねぇし、許したくもないし…だから今、電話で別れてきた」

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