《MUMEI》

「そう、…なの?」


リィン


晶が鈴を鳴らした。


「鈴の音一回が、肯定で、二回が否定よ」


紗己さんが説明してくれた。


(そんな事って…あるんだ)

信じられなかったが…


私の周りに起こる事はいつも『信じられない事』だから


(もしかすると…)


今回も、あるかもしれないと思えた。


「だから、精気は必要無いのよ。

絶対、あげないでね!
今のゆきは、体力も無いんだから、ね?!」

「…うん」


それからも何故か紗己さんは、何度も『お願いね』と念を押した。


「でも…夜は一緒にいてくれる?」


リィン リィン


「駄目よ」


「どうして? 何もしないのに?」


リィン リィン


(どうして…)


「晶が側にいないと、眠れないの」


音は、聞こえなかった。


「じゃあ、手を握って?」

私は控え目な提案をした。

それでも晶は鈴を鳴らさなかった。


「…眠るまででいいから」

そこでようやく、小さく一回鈴が鳴った。


「着替えとお風呂の世話は私がやるからね」


「え、でも…」


考えてみれば、紗己さんは『守護神』の世話役なのだ。


「大丈夫なの?」

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