《MUMEI》
生身の限界
その夜。

「おやすみ、晶」

リィン


私は晶の手を握り締めながら、眠りについた。





ゆきは基本的に寝付きが良かった。

晶が側にいるという安心感もあり、目を閉じると、すぐに寝息をたて始めた。

神はその無防備な寝顔を確認すると、ゆっくりとゆきの指を自分から外し、その手を布団の中に入れた。


すぐに後ろから肩を叩かれた。

振り返らなくても、神には相手がわかっていた。

―紗己だ。

神とゆきを二人きりにしたくない紗己は、振り向いた神に、すぐに無言で部屋の出口を指差した。

『早く出ていけ』

紗己は無言でそう圧力をかけた。

言われなくても、神はそうするつもりだった。

神は、右手と左足に付けられた鈴をできるだけ鳴らさないように細心の注意を払いながら、部屋の出口まで行き、ふすまを開け、廊下に出た。

閉めようとすると、内側から紗己が、素早く先に閉めた。

紗己は神を信用していなかった。

ゆきが神を晶だと思い込んでいるのをいいことに、神がゆきに手を出すのではないかと疑っていたのだ。

だから、紗己は神に鈴を付け、居場所がすぐにわかるようにし、自分自身はゆきと一緒の部屋で眠る事にした。

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