《MUMEI》

神に付けられた鈴の目的は、表向きは目の見えないゆきのためだが、あれは、神がゆきに不用意に近付いた時にわかるようにという意味もあった。

それから、ゆきと神の距離が必要以上に縮まらないように、さまざまな設定を作り出した。

多少の矛盾や強引さはあるが、ゆきが未だに混乱している隙をついて、どうにか納得させる事ができた。

紗己は、とりあえず安心した。





しかし


実は


紗己よりも、神の方がはるかに安心していた。


記憶の中の晶は、剣の分身―人外の存在だけあって、ゆきに密着していても、必要以上に反応はしない。

…精気を欲する時以外は、まるで聖人のように、ゆきに接していた。


それに比べて、神は人間だ。

悲しい程、生身の男なのだ。

ゆきに、愛する女に触れられたら



反応してしまう。

少し抱き締めただけで、鼓動がすぐに早くなる。

これで、晶がしていたように

毎晩、ゆきと同じ布団で眠って

何の反応もしない自信は、神には無かった。

きっと、無理だと神は思った。

心は我慢しても、触れなくても、反応する。

…下半身が。

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