《MUMEI》
連絡
「先生、大丈夫ですか?」

組まれた鉄板を屋根がわりにして三人は立ち止まる。
マボロシは様子を伺うように三人の上空をフヨフヨしていた。

羽田は膝に両手をつき、大きく肩を上下させる。
とても声を出すことができない。
返事の代わりに首を横に振ってみせる。

「レッカ、先生、もう走れそうにないんだけど」

凜が言うと、レッカは呆れたように羽田を見た。

「だらしねえな、こんくらいで」

そして、ポケットからさっきと同じ四角い箱を取り出した。

「またそれ?」

リンが非難するような声をあげる。
しかし、レッカは「今度のは連絡用だって」ともう片方のポケットから野球ボールほどの大きさ球を取り出した。
それを箱に取り付ける。

「そのポケット、どれだけ入ってるのよ?」

「いっぱい」

笑って答えながら、レッカは右腕をブンブン回した。

「近くにいてくれるといいんだけどな」

そう言うと投げる位置を確認するように空を見上げ、二人を振り返った。

「ここからじゃたいした高さまで投げられねえから、ちょっと上まで行ってくる。二人はしゃがんで、耳塞いでろ。あ、でもマボロシには注意してろよ。いつ、また攻撃してくるかわかんねえから」

「……わかった」

「大丈夫、なの?」

ようやく喋れるようになった羽田は絞り出すようにレッカに聞く。

「平気だって。俺、足早いし。な?テラ」

レッカが言うと、今までずっと羽田の頭にしがみついていたテラが小さく鳴いた。
レッカはテラの頭をポンポンと撫でると「じゃ、行ってくる」と、勢いよく走り出して行った。

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