《MUMEI》 「浴衣……、似合うね。」 膝に七生の手が乗る。 「そうかな。」 七生の手が袖に入る。 「そう……」 七生の指が肩に一本一本並んでく。 「……そ……」 袖に入って来た手が腰に回る。 「浴衣って……、どきどきするね?」 俺は七生が少しずつ浴衣に侵食してくることの方がどきどきする……。 それに…… 「七生だって法被似合う」 「……それ、口説いてる?」 七生が結構真面目に聞いてきた。 「口説いとらん。称賛だ、称賛。」 すぐに調子付くし、力任せに押さえ付ける。 まるで、格闘技や柔道だ。 「もっとチョーダい?」 不快な気がしないのは俺のことをよく知っているから。嫌だと思う前に止める、調節が上手い。 おねだりも上手い。 「それは俺の体が欲しいってこと?」 コイツさては、ヤりたいだけなのかな。 七生は俺を掴んだまま地べたに仰向けに置く。 足は階段に置いたままだ。 ―――――ゴッ 寝かされた瞬間に頭突きされる。 「馬鹿じろー」 痛がっている間に間合いを詰め寄られた。 「いたいっ……」 頭がじんじんする。 「ヤりたいだけならいつだってヤれるじゃないかっ」 語尾を荒らげた七生が右膝の裏を持ち上げ、脇に挟んだ。 右足がめくれて涼しい。 浮いた足の隙間から七生の指が侵入してきた。 七生の掌で臀を支えられ、小指の先は窪みを掻いた。 変だ。 怖くて痛くて泣いてしまいそうなのに、七生が居るからちょっとだけ安心…… 「 ……ヤッ」 七生の硬いのが押し当てられて腰が引けた。 「それをしないのは二郎を優先してるからだ!――――――ずっと、待ってるんだよ…… 言わなきゃいけないこと、いつ話してくれるの?」 …………七生………… 「ゴメン、すっかり忘れてた。」 七生は唖然とした面持ちで俺と目を合わせた後、突っ伏し、乱れて露になっていた鎖骨を噛まれた。 前へ |次へ |
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