《MUMEI》
葬式
―某月某日―

今日は、
大輝のクラスメートのお父さんの
葬式
だった。
そこには私も
参加した。
これは
私が初めて観た
人の死
だった。

私の周りの人は

泣いていた。

私は
泣かなかった。

哀しみを
まだ
知らなかった
から。

死を
ちゃんと
わかっていなかったから。
「…大輝」
大輝は、私を造った天才高校生だ。
「何?」
「人は、何故他人が死んだとき、涙という液体を眼から流すのですか?」
大輝は眼をきつく閉じて考え込んだあと、クスクスと気付かれないように笑った。
「液体を眼から流すて…まあそうだけど…」
大輝は一瞬言葉をきって、うつむいた。
「…哀しいからだよ」
大輝は小さく細い声で答えた。
…少し、淋しそうに見えた。
「哀しみとは、何ですか?」
私の質問に、大輝は困った顔をして、頭を掻いた。
「…う〜ん…そうだな……例えて言えば……、胸にポッカリ穴があいたような感じ、かな」
胸に穴があく……?
「哀しみとは、痛いものですか?」
大輝は苦笑した。
「や、そういう意味じゃあ無いんだけど…」
これ以上聞くのは止めておこう。困っているようだ。
「では、死とは何ですか。」
「…それは」
大輝は私の眼をみて話した。
「…その人の全てが消えてしまうことだよ。…肉体も、全て。何もかもが。」
「…ココロもですか?キモチも消えてしまうんですか?」
大輝は俯いた。
…そして、本の少しだけ頷いた。
「…多分、な」
その時私は、何か分からない感情にかられた。
「…それは…誰にもやって来るのですか?」
大輝は、今度は強く頷いた。
私は、俯いた。
「…やです」
「え?」
「…嫌ですよ、そんなの」
大輝は、眼を伏せた。

死は、私にはやって来ない。
でも、
大輝には必ずやって来る。
必ず、いつか
別れがくるんだ――

私は、アンドロイドだった。

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