《MUMEI》 「やっぱり、外の方が明るいのね」 紗己さんに薄手のカーディガンのような上着を着せてもらい、縁側まで連れてきてもらった私は、何度も瞬きをした。 相変わらず、何も見えないけれど、かろうじて、昼夜や明暗の違いは区別できた。 「さ、ゆき。座って」 私は紗己さんに言われるままにその場に座った。 紗己さんが、私の足を持ち上げて、靴を履かせてくれた。 「ありがとう、紗己さん。晶、行こう?」 私は隣に見える銀色の光に向かって手を伸ばした。 ふすまや壁があると、晶の光は見えなくなるが、外ならどこでも見つけられた。 リィン 晶は、私の手をとった。 私はゆっくりと立ち上がる。 「大丈夫?ゆき」 少しふらつくと、すぐに紗己さんが支えてくれた。 …以前なら、その役目は晶のはずなのだが。 晶は、私が言わないと、私には触れなかった。 何となく、違和感を感じた。 ジッと、晶を見てみる。 相変わらず、私に見える 唯一の、銀色の光。 晶の、光。 「ゆき?」 「何でもない。ありがとう、紗己さん」 私はそれから晶と手を繋いで、庭を少し歩いた。 帰り際に、晶が紅葉の葉を私の手の平に乗せてくれた。 前へ |次へ |
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