《MUMEI》

手の平に乗せたのが、紅葉だとわかったのは、晶が私の手の平の上で、葉の輪郭をゆっくりとなぞったからだった。

「くすぐったい」

私は、自然と笑顔になった。

「ありがとう、晶」

リィン


それから―

毎日晶は庭で拾った物を、私の手の平に乗せてなぞるのが日課になった。

やがて葉が無くなり―

風が冷たくなり

上着が薄手から厚手になり
コートになっても

私達は庭に出るのが日課になった。

そして、私と晶のの名前の由来である『雪』が降る季節

冬になると、私達は自然と寄り添いながら、庭を歩いた。


この頃になると、紗己さんは一緒に庭に出なくなった。

「寒いの苦手だから、部屋にいるわ。

晶君と二人なら、大丈夫よね」

優しい口調で紗己さんは言った。

「うん」

リィン

大丈夫。

晶と一緒だから。

秋も、冬も、これからずっと…

大丈夫だと私は思った。

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