《MUMEI》
初挑戦
神は、ゆきの為に、何かをしなければと思い、生まれて初めて料理を作った。

お粥なんて、水と米と塩を入れるだけだから、失敗するはず無いと思っていた。
水と米を鍋に入れて、適当にグツグツいい始めたところで火を止め、塩を入れた。

一掴み、どっさりと。

厨房にいた人間が誰も注意しなかったから、これで大丈夫だと…

神はそれを椀に盛り、蓋をしてゆきの元へ運んだ。

厨房の人間は何も言わなかったのではない。


神が怖くて、何も言えなかったのだ。


「あれは、ヤバいだろ…」

誰かの言葉に、厨房にいた全員が頷いた。


蓋を開けた紗己は、一応見た目はかろうじてお粥だったので、それをゆきに手渡した。


ゆきがスプーンでお粥を口に運ぶ。


神は少し緊張しながらその様子を見守った。


「…」


ゆきは、無反応だった。

何故かあまり噛まずに、お粥を飲み込む。

そして、…

ゆきの手が止まった。

「? どうしたの?」

「…」

紗己が質問しても、ゆきは答えない。

「ちょっと、それ貸してね」

紗己がゆきの椀を手にとり、神のお粥を、食べた。


「うっ?!」

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