《MUMEI》

「最初からじゃないのか?」

「勿体無いでしょう?
捨てるのは、ゆきが嫌がるから。

あなたは先にゆきの所に戻ってて」

そう言うと、紗己は椀を持って厨房に向かった。

紗己が言った通り、ゆきは『勿体無いから食べる』と言ったが…

神は即座に、鈴を二回鳴らした。

何度かそんなやりとりをしていると、

「お待たせ、ゆき。
最初からじゃなくて、ちょっと手を加えたからね」

紗己が椀を持って現れた。
あのどうしようもない物体をどうしたのか神は気になった。

「ありがとう、紗己さん」
ゆきは椀を手にすると、躊躇いなく食べ始めた。

「美味しい。…玉子とネギ?」

「そう。ちょっとしょっぱかったし、固かったから、水だけ変えて、もう少し煮て、溶き玉子を加えてみたの。

あとは、仕上げにネギもね。

これなら、栄養もとれるし、玉子もネギも厨房で余ってたの使ったから、大丈夫よ」

紗己の言葉に、ゆきは笑顔でお礼を言い、神の作った物体から立派に変身した玉子粥を完食した。

神は初めて

紗己を尊敬した。

考えてみれば…

ゆきの看病

着替え等々の世話全般を、紗己は実に手際よくこなしていた。

神は、本当に側にいただけだった

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