《MUMEI》 悪循環〜栄実視点〜 沈黙を破った私を、海がどんな表情で見ているのかは分からない。 怖くて、後ろを振り向くことも出来ない。 あんなこと言われたら誰だって怒るよね・・・。 そんな私の予想を裏切り、海の今にも消えそうな弱々しい声が背中越しに私に届く。 「今更って言われても仕方ないけど・・・ 今更でも言わなきゃ栄実は、ずっと自分の気持ち押し殺して自分を責め続けるだろ? 今まで、触れたらいけないって思ってた。 そうさせたのは・・・俺だから。」 海は一旦そこで言葉を切り、今度はしっかりとした口調で私の心に問いかける。 「なぁ栄実・・・? 本当は、麗羅チャンや歩のこと大切に思ってるんだろ?」 その質問に、私は早口で答える。 「さっきも言ったように 麗羅のことも歩っちのことも・・・何とも思ってない!! それに海には関係ないでしょ! 放っておいて!!!」 言い終わった後で私は、走り出した。 足が勝手に動く。これ以上私の心の中を見透かさないで・・・。 過去にこだわって、今度は大切な人を自分で傷つけているのには 気づかない振り・・・。 前へ |次へ |
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