《MUMEI》

「恐い顔」

左近はポツリと呟いた。


「こんな時間になっちゃったのはね、『守護神』の仕事があったからだよ。

君と違って、忙しいからね」

嫌味っぽく、右近は自分が『守護神』であることを強調した。


「ゆきは眠った。 …帰れ」

「昼間、見たよ」


右近は、神の言葉を無視して話を続けた。


「可哀想に。ゆきちゃん、目が見えないんだね。

左近がね、慰めてあげたいんだって」

「必要無いし、ゆきは、無言で近付いても、左近が晶でないことはわかるぞ。

…ゆきは、俺の中の晶だけは見えている」

「でも、ゆきちゃんには、言って無いよね?」


右近の言葉に、神はギクリとした。

その隙を見逃さず、右近は喋り続ける。


「可哀想に。 何も知らずに神を晶だと信じてるんだね。

教えてあげようかな?

ゆきちゃんに。

側にいるのは、君を犯した神だよって」

「貴様」

神は右近に殴りかかろうとした。

「いいの? 隣の二人に聞こえるよ?」

右近の目の前にあった神の拳が震えながら止まる。

「だからさ。君、ここにいてよ。

彼女達、今晩貸してね」

右近は笑顔で言った。

『彼女達』

「まさか、貴様…」

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