《MUMEI》

「国を守る程の力は無くても…

お前達のような害虫からゆきを守る力はあるようだ。
…あぁ、もう聞こえてないか」


神は、右近とは反対に、うつ伏せで倒れ、痙攣を起こしている左近を見つめながら言った。


神と晶の力は全てあの金色の―


『新しい神』に移っていたが、


僅かではあるが、

ゆきの父親の力

鳴神の、雷の力は神の中にあったようだ。

眠っていた力が、ゆきの危険と共に目覚めたらしい。
剣を生み出す程の強い力ではないが、少なくとも、『害虫駆除』はできる。

ゆきを守れる。

今の神にはそれで十分だった。

神は、感謝を込めて、グッと右手を握り締めた。





神は右近と左近をズルズルと引きずり、『守護神』の屋敷の前に並べて置いた。
翌日、引きずる音がゆきと紗己に聞こえたらしく、紗己に質問された神はこう答えた。


「粗大ゴミを捨てただけだ」


―と。


それ以来


右近と左近は二度とゆきには近付かなかった―

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