《MUMEI》

「久しぶり、ゆき」

(この声、…まさか)

でも、そんなはずない。

ここに、来れるはずない。

「こら〜、友達の声も忘れちゃったの?」

声の主は、私に近付く。

「ちょっ…」

戸惑う紗己さんの近くで晶の鈴が鳴った。

…どうやら、紗己さんを引き止めたらしい。

「晶君に誘われて、来ちゃった!

誕生日おめでとう、ゆき!」


明るい声。


三年間、近くで聞いていた声。


間違えるはずはない。


…橙だった、同級生を。


「汐里なの?」


(本当に?)


夢かと思った。


あの頃の

『守護神』の事など全く知らなかった頃に戻りたいと
そんな想いが見せた夢だと。


でも


「そうよ! 何よ、わかるじゃない!
驚かせないで!」


そう言って、私を抱きしめる汐里の腕は、

昔と変わらず

温かかった―


「ゆきの、同級生?」

「はい! はじめまして。宮崎汐里と言います」


紗己さんの質問に、汐里ははきはきと答えた。


私達の手元には、汐里が持ってきてくれたケーキと、紗己さんが用意した紅茶が並んでいた。


「どうやって、ここに?」
「晶君から、手紙が来たんです」

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