《MUMEI》
5
あたしは学校を終えて家に帰ってきた。

「ハル、川ちゃんが呼んでたよ」

帰ってくるなりおばあちゃんにそう言われた。

川ちゃん…
川子さんか…

「…どこ行けばいいの?」

「お向かいの呉服屋よ」
はぁ。
あの人なんか苦手だし…



呉服屋の店内に川子さんはいなかった。
店の裏にまわってみる。…いた。
縁側に座っている。

絵にはなるなあ
あの人…

「なんですか?いきなり呼び出して」

「シバコ、煎餅がないの。買ってきて」
「はっ?嫌ですっ!自分で買いに行ってください!」

そんな事のためにあたしは呼ばれたのー?!

「シバコ、あんたのシャツ誰が洗濯してやったと思ってるの?」

「誰って…おばあちゃんですよね」
「違うわよ!あたしよ」
川子さんの指差す先には…
まっピンクのTシャツが!
「あたし…ピンクのTシャツは持ってきてないですけど…」

いやな予感。
近寄って見てみる。

ぎゃぁあぁあ!!!
声にならない悲鳴。

「赤い着物と一緒に洗っちゃった」
にこっ、て!
そんなんですまされると思ってるのーっ?!

かなりお気に入りの白いTシャツは新たな進化をとげていた…

「ますます嫌です…煎餅は責任取って自分で買いに行ってください…!」
「じゃああたしこれからもあんたのシャツ洗うから」

はっ。

…………

「行ってきます!」




なんて…悪魔みたいな人…

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫