《MUMEI》 *電話*‥夜 あたしのケイタイが鳴った。 「咲也‥!?」 咲也からだ‥。 「もしもし‥?」 《‥‥菜花》 「咲也、だよね‥?」 《うん‥オレ》 咲也‥ 何か 元気ないみたい‥。 「咲也、大丈夫‥?」 《あのさ菜花‥、怒ってるか‥?》 「ぇ?」 《黙っていなくなって‥菜花の事置き去りにした事‥》 「全然♪──手紙、ありがとね」 《菜花、オレさ‥》 「?」 《ずっと嘘ついてたんだ》 「嘘‥?」 《お前に告られた時‥『分かんない』って言っただろ、オレ》 「うん‥」 《あれ‥嘘なんだよ》 「ぇ‥?」 《オレも‥お前の事好きなんだ》 「ぇ‥」 《実はさ‥だいぶ前から引っ越す事決まってたんだ。でもお前には言えなかった‥。お前の事傷付けたくなくて‥だから、どうしたらいいかって‥考えて‥》 「さくや‥」 《それで‥あんな嘘ついたんだ‥会えなくなっちまうのに好きだなんて言ったら‥辛くなるに決まってる‥。ならいっそ‥オレの事嫌いになって‥忘れてくれたら‥》 「ばか‥」 《‥菜花‥?》 「咲也のバカ‥!」 《‥‥‥‥》 「そんな心配しなくていいのに‥」 《え‥?》 「あたしは‥咲也の事嫌いになんかなれないし、忘れる事も出来ないんだよ‥」 《菜花‥》 「好きになった相手を‥簡単に嫌いになんかなれないよ‥」 《‥‥‥ごめん‥》 「ぇ‥?」 《オレ‥ずっと菜花と一緒にいて‥お前の事‥全部知ったつもりになってた‥。でも‥違ったよな‥》 「そんな事‥」 《ごめんな‥》 「咲也‥泣いてるの‥?」 《サイテーだよな、オレ‥》 「そんな事ないよ!」 《!?》 「サイテーなんかじゃないよ!‥咲也は‥咲也はカッコいいし‥‥カフェラテおごってくれるし──約束絶対守るし、優しいし、あたしより、ずっと、ずっと‥」 《菜花‥》 「だからもう‥絶対そんな事言わないで‥」 《サンキュ、菜花‥》 「お礼言うのはあたしの方だよ」 《?》 「ありがと、咲也。あたしの事‥好きになってくれて‥。嬉しかった‥」 《あのさ》 「ん?」 《待っててくれな、約束‥絶対守るから》 「うん。──待ってる」 《また電話するから。じゃな》 「うん、バイバイ」 あたしは 耳から放したケイタイを そっと 握りしめた。 前へ |次へ |
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