《MUMEI》
遅刻常習犯
「ダメダメダメダメダメ!」

首を振って抵抗する。
面白がって皆にとっては遊びの一つなんだろう、俺は見世物みたいだ。
視界が近付いてきた乙矢に移るその距離1センチ。

「二郎、俺のこと嫌い?」

乙矢を見てたら、七生を思い出した。
いつもの冷ややかな声が、丸みを帯びて七生に似ていたからだ。

「嫌いじゃ無いけど……」

それとこれとは別。



「美作ー!もっとやれー!」

周りが急かす。
そんなものが娯楽になってしまうなんて虚しい。

「……シィ」

人差し指を唇に当てた乙矢のその一つの動作で瞬く間に静かになる。

「おとや……俺は 」

七生じゃなきゃ駄目なんだ



言う前に乙矢の指が上唇に乗り、強制的に静止した。

「二郎、知ってるから」

乙矢…………?口角を上げ微笑した。

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