《MUMEI》 有理ノ代ワリノ2日間Aすぐ有理につながった。 「もしもし、有理!!オレ聞いてないよ!?どうして今日歌うって教えてくれなかったんだよ」 『…は?知らねぇよ。自分でなんとかしろ』 そう言うと有理は電話を切ろうとした。冗談じゃない! 「で…でもオレ一回も有理の新曲歌ったことないんだよ?」 『聞いたことぐらいあるだろ』 「でも………」 電話の向こうで溜め息がした。 『…ったく、待ってろ』 それから電話口をふさがれて、何も聞こえなくなった。 『僕の足元には 道はない 今まで 歩んできた道ならある それは僕がこの世から いなくなっても 同じ なんだと 思う』 急に透き通った歌声が流理の鼓膜をノックした。 ―――うまい。改めて弟の凄さに感心していたら。 『……流理、明日も仕事行けよ。今日の貸しだ』 「ええ一っ!ひどいよ!」 『お前が悪いんだろ。オレの新曲も知らなかったんだから』 「まだ発売前じゃん!」 流理の叫びも空しく、有理は笑い声だけ残して電話を切った。 「まったく有理のヤツ……。兄を何だと思ってるんだ」 「あっ流……いえ、春日さん!次ですよ!」 「あ…すみません」 収録スタジオに戻ると、環が駆け寄ってきた。 結構時間を食っていたことに驚いた。有理の歌は時間の感覚を狂わせる。 *** 「お疲れ様でした!今回の曲もいい曲ですね」 「ありがとうございます…。夏坂さんの曲もいい曲でしたよ」 「いいえ、そんな……」 環は顔を赤らめてうつむいた。 「それじゃあお疲れ様です」 「ハイ!明日も一緒に頑張りましょうね」 ………明日? 「明日の仕事の予定は?」 マネージャーに尋ねる。ちなみにマネージャーはふたりの入れ替わりに気付いていない。 「明日は映画の撮影。夏坂環さんと一緒だよ」 前へ |次へ |
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