《MUMEI》

「え〜、『翔子様』って一体何者?!」

汐里の質問に、私は『親戚』と答えた。

…間違ってはいない。

「なるほど、わがままお嬢か」

汐里はすぐに納得し、部屋の中にいた私以外の全員が大きく頷いた。


「で、余った着物でゆきに似合いそうなの、とっておいたの。

サイズ直し終わってたのが、これ。

あ、汐里ちゃんもよかったら何か持ってく?

バックやアクセサリーもあるわよ」

「いただきます!」


紗己さんの提案に、汐里は嬉しそうに答えた。


(良かった)

私も汐里にお礼をしたかったから、紗己さんの配慮が嬉しかった。


着物を着付けてもらい、髪も何やらいじられ…

久しぶりに、化粧もされた。

「はい、終わり」


「素敵!」×4


女性陣の厳しいチェックが終わったところで、やっと晶は入室を許された。


「どう?晶君」

リンリンリンリンリンリン
晶はとめどなく鈴を鳴らした。


「そんなにゆきは可愛い?」

リィン!

紗己さんは晶の返事に何度も『そうでしょう』と言い、晶がその都度鈴を鳴らすから、私はさすがに恥ずかしくなった。

「もう、…やめて」

多分、今私の顔は真っ赤だった。

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