《MUMEI》
未練
千夏と美幸の話を聞きながら太一のことを思い出していた。



私は・・・まだ太一のことを忘れられないでいる。



太一との出会いはフランス語の授業だった。






「それじゃ隣の席の人とペアになって今やった自己紹介をしてください」


フランス人の先生がたどたどしい日本語で言う。


「じゃぁ僕から…」


隣に座る男子生徒が私の方を向いて自己紹介をする。


「ジュマペル タイチババ…」


それが太一だった。




フランス語のRの発音が難しくて、よく二人で大笑いしながら練習した。


「エーハ」


「違うよアーハだろ!」


「いや絶対にエーハよ!」


そんなくだらない議論を繰り返し、いつも太一が匙を投げる。


「もうどっちでもいいよ」


「そうね…そろそろ行かなくちゃ」


「デート?」


この頃の太一は恋愛の良き相談相手で、


「ボロだして捨てられんなよ〜!」


なんてよく言われ、私はいつも適当に返事をしていた。


「分かってる!」






「………る」



「……てる?」



「聞いてる!?」


「えっ!?」


はっと我にかえると千夏に睨まれていた。


「愛加ったらボーッとしちゃって!全然聞いてなかったわね!!」


「ごめんごめん…」


「愛加、元気ないみたいだけど…もしかして太一のこと…」


美幸が何かを察知したのか鋭い質問をする。


「後悔はしてないわ」


「そうよね!愛加はそうでなくっちゃ」


千夏が安心したのか、妙にはしゃいだ相づちをした。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫