《MUMEI》
内藤視点
「なんだこの傷!、いーちゃん随分とお盛んなんじゃないの?」
「ち、違う!そんなんじゃないですって!」
楽屋で着替える俺を煙草を吹かしながら潮崎隆志君は俺をからかう。
事務所は違うけど、今回のドラマの共演で仲良くなったんだ。
「あれ?隆志君て加藤惇と同じ事務所だよね?」
「そうだけど…あー、同じ高校?確かタメだよな」
「うん」
隆志君は煙草を灰皿でもみ消した。
「…アイツ学校じゃどんなだった?」
「え、うーんあんまり話さなかったから良く分かんなかった」
「…そう」
俺が聞きたかったのに先に聞かれてしまった。
俺が私服に着終えると隆志君は待ってた様に立ち上がった。
▽
隆志君の車の助手席から夜の明治通りを眺める。
俺は2日前の加藤との出来事が頭からずっと離れられないでいた。
加藤…、
お前に俺はどうしてあげたら良いのか、
自分に出来る事があるのか、
あるなら何なのか答えがでないんだよ。
抱きしめて守りたくてもむやみに触れて良いのかさえ判断がつかない。
下手に傍に居て、もし一人の方が気楽だと思われたらと考えると
近づく事さえ出来なくて。
一言、大丈夫?
とメールを入れたら届く事もなく受信拒否されてしまった。
「何か考え事?」
赤信号で止まる中、
隆志君が俺を見ながら言った。
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