《MUMEI》
募る不安
紗己は、ゆきが神の手を握り締めながら寝たのを確認すると、神と一緒に隣の部屋に移動した。

「これは、もういいわね」
そう言って、紗己は懐から鍵を取り出すと、左足に付いていた鎖を外した。

鎖に付けられていたいくつかの鈴が音を立てた。

手に付けられた鈴は、ブレスレットのような物に付いていたので、簡単に外れるが、足の鈴は、紗己が管理していた。

「じゃあね」

紗己は神の足にはめられていた物を回収すると、立ち上がった。

「見張らなくていいのか?」


「あなたは、もうゆきに手を出せないでしょう?」


紗己の言葉に、神は固まった。


「…わからないぞ」


紗己は知らない

毎晩ゆきを思い出しながら、自慰行為を繰り返す神を。

「わかるわよ。 あなたは、ゆきを裏切れない。

たとえ、妄想で何度ゆきを犯しても、現実のゆきは抱けない」

神が顔を上げると、紗己は笑顔で続けた。


「私は、あなたを許さないわよ。

一生、ゆきの側で苦しんで苦しんで

相手にもされず

見てももらえず

『晶』として、死になさい。

それが、あなたの償いなんでしょう?」


氷のような笑顔で紗己は神を睨みつけた。

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