《MUMEI》 槍が認めた人物「・・助かる。」 不振な表情を浮かべながらも受け取り、構える。 「ロゼ様・・良いんですか!?」 「非常事態です、私が持っていても・・魔力が無い。」 渡された「グングニル」を見て、驚く禾憐。 皇国の国宝なのだ、その驚きも当然。 「逃がすな!!」 周囲には未だに多数の敵兵の姿。 ギィン!! 振り下ろされる剣を「グングニル」で受け流し、返す一撃で貫かんとするが・・ ガッ・・ 錆びてボロボロの槍、貫けるはずが無い。 「魔力を通してください。ソレは本来の姿ではありません!」 「・・っく!!」 すでに魔力は流し、古びた槍の強度を上げている。 これ以上の魔力を流せば・・・魔力に耐え切れず槍が砕けると、長年の経験が言っている。だが・・ キィィィィィ!! 直感は問題ないと告げていた。 バリィィン!! 弾けるように古びた外装が崩れ、消えていく。 後に残ったのは姿を現した神代の聖槍。 穂先は左右に短い二本と中央に長い一本の三叉。 柄には複雑な紋章が刻まれ、リースの魔力によって蒼く輝いている。 シャン!! 振るわれた一撃を受け流す、その音は清音。 相手の剣を粉々に粉砕しながら受け流す。 返す一撃は音も無く。 もはや抵抗も無く鎧を貫通する。 「グングニル」の魔力が溢れ出すようにリースの体を満たす。 「嘘・・」 「グングニル」を構えるリースを見て、禾憐が呆然と呟く。 ロゼが使う際、「グングニル」は燐光を纏わず、光のみを纏う。 「グングニル」が燐光を纏うのは持ち主を認めた場合のみ。 「グングニル」はリースを持ち主と認め、その力を貸していた。 「・・急ぎましょう、禾憐。」 セイを担ぐ腕に力を籠め、走る速度を上げる。 「はい・・風の音を啼き急ぐ、大地の音を吼え願う・・」 リースの動きは目に見えて鋭く、一陣の風と化していく。 禾憐はロゼの隣を走りながら、歌を紡ぐ。 前へ |次へ |
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