《MUMEI》
巡る季節
庭に出るときは帽子が必要になってきた。

半袖でも、昼間は汗ばむので、庭に出るのは朝か夕方の涼しい時にするようにした。

「また、夏が来たのね」

リィン

晶の鈴が、風鈴のように聞こえた。

晶の鈴は今は手に付いている一つだけだった。

『動きはわかるみたいだし、会話用に手の鈴は残すわね』

紗己さんがそう説明してくれた。

その紗己さんは…

今はいない。


彼女は


ジューン・ブライド。


『六月の花嫁』になった。

相手は、同じ離れにいた、厨房に働いていた男性。


彼は、御剣一族ではなく、一族の分家の一人に料理の腕を買われてここに来ていた一般人だった。


彼は、ずっと自分の店を開くのが夢で、やっと資金が貯まったらしい。


ちなみに、紗己さんとは、紗己さんが私の世話役になる前から付き合っていたらしい。


「ごめんなさい、紗己さんを独り占めしちゃって」

「あぁ、いえいえ! むしろ紗己がいろいろ失礼な事しちゃってすみませんでした」


紗己さんの旦那さんは、顔は見えないけど、優しそうな声の人だった。


「ごめんなさい、ゆき。
ずっと一緒にいたかったのに…」

紗己さんは申し訳なさそうだった

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