《MUMEI》 「ううん、紗己さん。 今までありがとう。 …幸せになってね」 (私の分も) 「ありがとう。あなたもね」 紗己さんは私を優しく強く抱き締めた。 「晶君。ゆきをお願いね」 リィン そうして 紗己さんは屋敷から出ていった。 愛する人と新しい生活を始める為に。 大切な人との別れはいつも突然やってくる。 (でも…) 義母の時と違い、紗己さんはこれから、幸せに生きる。 それが何よりの救いだった。 紗己さんがやってくれていた洗濯と食事の配膳は、しばらくは美幸さんが代わりにやってくれた。 しかし、その後、私と晶は厨房の近くの使用人用の食堂で使用人と一緒に食事をして、片付けをするようになった。 そして、洗濯は美幸さんと二人で行うようになった。 美幸さんは情報通で、新しい情報が入るとすぐに教えてくれた。 紗己さんは姉のようだったが… 美幸さんは私より一つ年下で、妹のような存在になった。 季節は巡る。 人も変わる。 変わらないのは、人ではない晶だけだと思っていたのに… 最近、晶は私に対してより一層よそよそしくなった。 側にはいてくれるのに、全く触れなくなった。 前へ |次へ |
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