《MUMEI》
呼び出し
ある夜。

神の部屋に珍しくスーツの男が現れた。

「当主がお呼びです、『晶様』」

「こんな時間にか?」

「ゆき様が寝てからの方が良いからとの、御命令でしたので」

「わかった」

神は立ち上がった。

向かった先は、以前自分が寝ていた寝所だった。

そこで神を待っていたのは、かつての自分の剣の分身―『姫』と呼んだ男で

今は当主の『神』と

風の『守護神』の翔子だった。


「久しぶりだな、『晶』」
「あぁ、いや、そうですね、『当主』」


命令に忠実に、実に当主らしく振る舞うその姿に、神は苦笑しながら『晶』として対応した。


「お呼びだと伺いましたが?」


「翔子に子供が出来た」


「それはそれは…」


神は驚きつつ、


「おめでとうございます」

深々と二人に頭を下げた。

『翔子様と当主はラブラブ』と以前美幸が言っていたが、まさかこの『当主』と翔子の間に子供が作れるとは思わなかった。


「これで、御剣も安泰ですね」


『当主』と風の『守護神』の子供なら、跡取りとしてふさわしいと思った。


「ところが、反対している者がいる」

「それは…」

いるとしたら、一人しかいない。

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