《MUMEI》
後続
「良い感じで・・逃がせてるみたいだね!!」
シュン!シュン!
一息で振り回されるシルフィールドは周囲の風を真空波として放ちながら二つの刀身で敵を切り刻む。
全方位攻撃、二つの刃が回れば周囲を円状になぎ払い、放たれる真空波は的確に命を刈り取っていく。
「く・・だがその長物ならば!!」
振り抜いた一瞬の隙で詰め寄るつもりか、一人の兵が突っ込んでくる。
この距離ならば、シルフィールドの長さが邪魔となる・・だが
カキ・・
リアムの手には真ん中で二つに分かれ、小型の剣に近い形状となったシルフィールド。
ジャララ・・・
二つに分かれたシルフィールドを繋げる鎖が奏でる音の元、切り伏せる。
「良い覚悟だし、判断だね。だけど・・・弱い。」
冷酷に言い捨てる。
ジャラン・・
二つに分かれたシルフィールドを双剣士のように構える。
「邪魔をしないでほしいんだけど、無理だろうね・・」
次第に逃走した捕虜を追う動きが慌しくなる。
ギィィン!!
「逃走成功かな、じゃ私も逃げよっと!!」
剣で防がれた攻撃に力を籠め、押し飛ばし、リース達が逃げた方向へと自身も駆け出す。

「状況は理解した。アルトレア様と合流しよう。」
「「風姫」をその場で待機させ、追ってくるオデッセの軍への足止めに使う。」そんな提案もあった。
先行していた部隊が壊滅しているのは予想の範疇。
ならば追撃をココで食い止めるのは良策。
しかし、壊滅したとは言え時間は十分に稼げたはず。
ここで下手に防衛に使うよりは合流し、確実に撃退できる状況に持っていく。
それが最善であると判断した。
「風姫」は全軍騎馬。アルトレアが率いた一般部隊は騎馬、歩兵の半々。
全速で追いかければすぐに合流できるだろう。
「了解しました。では・・移動の用意を。」
「敵襲!!!」
声が上がると同時、長大な柱が振り下ろされる。

「見つけた!!ごま、頼んだぞ!!」
「きゅ〜!!」
疾走する速度はそのままにごまを放り投げる。
「式夜、無理はするな。あの軍旗は・・」
「「風姫」でしょう。知っています。」
頷きながらも疾走を続けていく。
「おおおおおお!!」
ズドォォン!!
ごまの剣が周囲の大地を吸収しながら巨大な柱と化し、先制の一撃となる。
結界など完全に重量で押し潰し、四散させる。

「・・無駄が多いが効果的ではあるか。」
ポイっと巴をごまの居る辺りに放り投げると、一気に疾走する速度を跳ね上げるシンギ。
両手にはすでに双剣が構えられている。
「雹雨・・」
キィィン・・
レイの呟く声に澄んだ金属音が重なる。
言葉に応じるように、上空に氷の塊が幾つか表れ、一斉に「風姫」に向かって飛んでいく。
指輪と剣を打ち合わせることで特定の音を出し、それを詠唱の代わりとする神音魔法。
詠唱時間が極端に短く、近距離戦闘中でも連続して出す事が出来るが習得が難しい。

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