《MUMEI》

たとえそれが神の命令でも。

愛し合う二人の間に産まれる子供はきっと幸せになれるだろう。


「あなたは、それで本当にいいの?」

「構いません」


元々、神は権力に興味は無かった。


「神。…最後に教えて」


「何ですか?」


「一体、あの娘のどこがそんなにいいの?

当主の座を捨ててまで、側にいる価値があるの?」


「さぁ、わかりません。
気付いたらもう好きでしたから」


「…お兄様と同じ事を言うのね」


毎晩御鏡に向かおうとする神尉に、神楽は今と同じ質問をした。

そして兄は、神尉は、神と同じように答えた。


「…でも、あなたはお兄様と違って辛そうよ」


神尉は毎日楽しそうだった。


「仕方ありません。

自業自得ですから」

神は苦笑した。


「…そう。 それでも、あなたはあの娘の側にいるつもりなのね」


神楽の言葉に、神は頷いた。


「あなたとゆきの子供は当主にはなれないかもよ?」
「…作るつもりはありません」


触れる事すらできないのに、どうやって子供を作るのかと、神は思っていた。


「わかりました。
私も一族の繁栄の為に、翔子とあの『神』の子供を認めましょう」

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