《MUMEI》

「ありがとうございます」

「あなたは、剣の分身のかわりになるという意味が、ちゃんとわかってるのね」

「は?」


突然話題が変わり、神は下げていた頭を上げて、神楽を見た。


「どういう意味ですか?」
「今回は特例だけれど、普通は剣の分身と主の間に子供はできない。

剣の分身は、人間ではないから。

あなたは、それに、人間ではないものになりきっている。

では、覚悟はできてるんでしょう?」


「何の覚悟ですか?」


側にいる覚悟だったら、既にできていた。


だが、神楽は思いがけない事を口にした。


「あの娘が、ゆきが他の『人間の男』に恋をして、愛して、結婚して、子供ができてもずっと側にいる覚悟よ。

…あなたまさか、剣の分身なのに、あの『当主』のように結婚できるとか思ってたの?

ありえないでしょう? 普通」


神楽は呆れたように言った。


「しかし、晶は特別ですから」


人間のように食事をするようになったと言っても、ゆきは信じた。


「いくら『人間みたい』でも、人間ではないでしょう?

翔子は割り切ってたようだけど…
大体そもそもあの娘は晶を恋愛対象として見てたの?
それなら話は別だけど」

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