《MUMEI》
特異能力・・「エルシオンの姫君」
「本当に良い眼を持っている・・だが、少々読みが甘いな。この距離ならば、そなたに触れることができる。」
そっと・・ハンディングの手がアルトレアの頬に触れる。
「ぇ?」
ドシャ・・
全身の力が消える。
「エクスカリバー」が古びた姿に戻り、崩れ落ちたアルトレアは立つ事もできず、ただ呆然とハンディングを見上げる。
「どうして・・」
ガシャン・・
「エクスカリバー」が地に落ちる。
平然と佇むハンディングの体は血に濡れているものの、傷は完全に塞がっていた。
「我が「エルシオンの姫」と呼ばれた能力。他者に触れることでその力を奪い自身の物とする、力の侵奪能力。死者に残った力を奪えば・・その死者は土に帰る。それが・・死者を送り出すと言われただけに過ぎぬ。」
「そんな・・」
「即死させていれば、そなたの勝ちであったよ。」
倒れているアルトレアの頬に再び触れる。

異変に気づき、数人が駆け寄って来ようとするが見えたが、彩詩、ロアによって止めらていた。
全身に力は入らず、指一本でさえ動かすことが出来ない。
次第に呼吸することさえも・・苦しく、辛くなっていく。
(・・・・もう、体は動かないか・・)
それでも、最後まで戦うと・・ハンディングを見続ける。
「・・・・・・」
ハンディングはただ無言。
頬に触れているはずの手の感触さえも無くなっていく。
「・・・・・い。」
何故か、言葉が出る。
「・・・くない。」
動かない腕に力を籠める。
「・・たくない。」
どれだけ、動けと力を籠めても、腕は動かない。
それでも・・それでも・・
「負けたくない。」
眼も次第に霞んでいく・・
目の前に居るハンディングの顔さえ、良く見えない。
「負けたくない・・負けてたまるものか・・」
意識はそこで完全に途切れた。
最後に見えたモノは漆黒の闇と紅い瞳。
そして・・・・紫の燐光。

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