《MUMEI》

「俺も初めて神楽様も、…母上も女だとさっき思いましたよ」

神は反撃した。


「…本当に、最後に『息子の神』に伝えたい事があるのだけれど、いいかしら、『晶』」

「はい」


これが、母として息子にかける最後の言葉になると、神にもわかった。


「私が今も昔も一番愛しているのはお兄様だけだけれど…

私を幸せにしてくれたのは、そんな私でもいいと愛してくれた、あなたのお父様よ。

だから、息子のあなたも、私は、私なりに愛していたわ」


強大な力を持って産まれた神が、かつての神尉のように、道を踏みはずさないよう、周囲は細心の注意をはらった。


特別さを強調するため、神楽は厳格な父親―神の祖父から、神との接触を禁じられた。


そして、当主として日々の仕事に追われた。


もし、皆の反対を押し切って、この手で神を育てられたら…


そう願わない日々は無かった。


全ては、叶わない夢だった。


だから、余計に愛する者の為に生きられる


神尉が、神が…


神楽には、羨ましかった。

神楽は大きくため息をついた。


そして―


「話は、以上です。もう、行きなさい。 『晶』」

神楽は、神に別れを告げた。

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