《MUMEI》 「俺も初めて神楽様も、…母上も女だとさっき思いましたよ」 神は反撃した。 「…本当に、最後に『息子の神』に伝えたい事があるのだけれど、いいかしら、『晶』」 「はい」 これが、母として息子にかける最後の言葉になると、神にもわかった。 「私が今も昔も一番愛しているのはお兄様だけだけれど… 私を幸せにしてくれたのは、そんな私でもいいと愛してくれた、あなたのお父様よ。 だから、息子のあなたも、私は、私なりに愛していたわ」 強大な力を持って産まれた神が、かつての神尉のように、道を踏みはずさないよう、周囲は細心の注意をはらった。 特別さを強調するため、神楽は厳格な父親―神の祖父から、神との接触を禁じられた。 そして、当主として日々の仕事に追われた。 もし、皆の反対を押し切って、この手で神を育てられたら… そう願わない日々は無かった。 全ては、叶わない夢だった。 だから、余計に愛する者の為に生きられる 神尉が、神が… 神楽には、羨ましかった。 神楽は大きくため息をついた。 そして― 「話は、以上です。もう、行きなさい。 『晶』」 神楽は、神に別れを告げた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |