《MUMEI》

「はあ、もうどうしたら良いのかわかんくて…」




「なんだ、悩み事?話してみなよ」




俺は加藤の事を女の子に置き換えて話した。




隆志君は殆ど黙ったまま最後まで聞いてくれた。




「隆志君だったらとうする?」



「俺だったら…、絶対一人にはしとかない」




「…どうして?」




運転に集中し正面を見据える隆志君を見ながら尋ねる。




「惚れた相手だからだよ」



「…惚れた…相手…」




「俺だったら相手にとって安心できる人間になれる様努力しつつ、出来るかぎり傍にいる、一人が楽なんて簡単に思える奴が精神的に不安定になったりなんかしないだろ?」



「今頃もしかして…」



「あーあ、そんなにデリートな子じゃ、きっといーちゃんよりその時の事気にしてんじゃないの?花少しでも喜んでくれた子ならさ、また花用意して今直ぐ行った方が良いね!






住んでる場所はどこ?」





やっぱり頼れる兄貴って奴?
隆志君は見た目も格好良いけど中身はもっと格好良い。






隆志君は、俺との外食の予定すっとばして花屋に寄って、加藤のマンションの前まで送ってくれた。








一緒に車から降りると隆志君は煙草を吹だした。




「埋め合わせ忘れんなよ?」



「忘れないよ!今日はゴメン、マジで感謝してる」




俺はもう一度有難うと隆志君に言うと踵を返しマンションに向いた。




すると同時にマンションの入り口から人が出てきた。






「…加藤」





そう言ったのは隆志君。

「…隆志…」









俺の方が加藤に近い位置にいるにも関わらず、加藤は俺の背後を身じろぎもせず見つめている。

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