《MUMEI》

「…そんなに驚く事? 大体、私と晶は元々そういう関係じゃないし」


(一回、危なかった事はあるけれど)


結局未遂に終わった。


「じゃあ、どういう関係なんです?」

「…」


主従…ではない

恋人…とも違う


(強いて言うなら…)


「家族?」


両親のいない私の側で、私を守ってくれる

兄のような、弟のような

かけがえのない存在だ。


「でも、晶君は溜ってるように見えますよ。

こんな近くにゆきさんみたいな綺麗な人いるし」


「そう…かなぁ?」


身近にそんな状態の人を見たことが無いから、私は知らなかった。


「一人ではしてますね、確実に」

「一人でって…何を?」


私は首を傾げた。


美幸さんは急に小声で説明した。


「…嘘!」


(晶が、そんな事するはずない)


「いや、でも男の人の下半身は、本能に忠実らしいですし…」

「だって…」


私は以前晶と毎晩寝ていた。

晶がそんな状態になった事も、そんな事をしているところも見たことはなかった。


「ゆき様? 大丈夫ですか? もう上がりましょう」

「う、うん…」

(のぼせそう…)

私はフラフラと、湯船から出た。

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