《MUMEI》

目が見えない私は、少しずつ手を移動させた。

脇腹・腰…

(あった)

ズボンのポケットに、手を入れてみる。

中には何も無い。

(あれ?)

手を入れたまま、少し動かしてみた。

硬い感触。

ポケットの、外。

(う…そ)

それが何か気付いてしまい、私は慌てて手を抜いた。
布越しとはいえ…

(ど、どうしよう…)

…触ってしまった。

しかも、この状態

この体勢…

急に恥ずかしくなり、私は晶から離れた。

(ごめん、晶!)


私は晶から掛布団をはぎとり、いそいそと、敷布団の上に移動した。


掛布団を頭からかぶって、必死で目をつぶる。


しばらくすると…


鈴の音がして―


晶が出ていった。


私はまだドキドキしていた。


(食事だけじゃなかったんだ)


人間らしくなったのは。


(あんなとこまでならなくていいのに!)


私はそれ以来―


晶を変に意識してしまうようになった。


もし晶が我慢しているなら、私は…


(無理!)


考えて、頭を左右に振った。

これじゃあ、あの時と

精気を求められた時と同じだ。


晶は好きだけど、そういう…恋人の好きではないのだから。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫