《MUMEI》 「ま、上手くいかない気がしてたのよね! だから、わざと別れてもらうきっかけ作りに見えるところでキスしたのよ。」 水瀬……、そんなだったんだ。 「水瀬のこと大事にしてくれてたじゃないか。」 何が不満なんだ? 「優し過ぎたの。 木下君もなんだけど、一度好きになった人の影を追い掛けているみたいで嫌になっちゃったの。」 「水瀬が好きだからじゃないの?俺は少なくともそのつもりだったよ。 追い掛けてもいいじゃん。似てても新しい好きな気持ち作って追い越せばいいんだから。」 「……木下君、正解。私なんかと別れて。 今ならチューされても良いくらい!」 俺の肩を水瀬が叩く。 「駄目だよ!」 そうやって、誘うような発言をして……! 「浮気相手には役不足だ。」 一言述べつつ乙矢が横切って行く。 「お目付け役に釘刺されちゃった。 そうだ。美作君とは、何処までしたの?私より進んでたりして。」 「……やだな、幼なじみだよ?何かある訳ないじゃないか。 王様ゲームのときも盛り上げる為のただの悪ノリだって!」 乙矢が俺となんてあるはずないだろう。 「……かわいそ」 「え?誰が?」 「なあんでもないよ」 水瀬は以前に劣らず色褪せること無い笑顔を咲かせた。 水瀬は片手を結んできた。 「水瀬……?」 前に繋いだ掌だ。 「キスじゃ受け取ってくれないでしょ? 木下君、元気になって本当に良かった。 …………繊細な人だから、恋に臆病にさせてしまったかと思ったけど、自惚れだったかな。」 そうか、水瀬なりの気遣いだったのか。 俺は弱いから、水瀬の好きな相手と重なったら耐えられない。 水瀬には水瀬の気持ちを知ろうとしない相手が必要だったんだ。 前へ |次へ |
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