《MUMEI》
加藤はぎこちなく俺の背中に腕を回してきた。
「…あったかい」
そして加藤は長く息を吐いた。
実家で飼っている犬…、包み抱きしめると安心してよくこんな息の吐き方をしていた。
そいつはそうなると決まってそのまま眠ってしまう。
ふとそんな事を思い出させる加藤の仕草に
愛しさが更に膨らんだ。
胸元にかかる熱い呼吸…、
心がいっぱいになると躰も満たされたくなる。
唇を合わせたくなって、加藤を抱えたまま助手席に沈めた。
そして少し上体を離し、瞼を瞑る加藤に俺はゆっくりと唇を重ねた。
――唇を重ねるだけのキス。
俺の背中にある加藤の手に力が入る。
――加藤は俺とのキスを受け入れた。
そして唇をゆっくりと離し、角度を変え今度は深く唇を合わせた。
「ンん…、ふぅ…」
唇をついばむ様に哈んだり舌を絡め甘噛みする。
何度も角度を変えながら考えつく限りのありったけのキスをした。
助手席を手探りでレバーを掴み倒し、加藤に覆い被さりながらまた唇を奪う。
加藤は時々呼吸が苦しそうに小さくうめいたが、それでもきつく俺にしがみついていた。
両手の指を絡ませあい、数秒だけ普通に呼吸をさせた後また唇を合わせる。
きつく握り合う指先がふと一つに溶けあった錯覚がした。
――もう止まらない。
長いキスから唇を鎖骨に移した。
薄い肌を唇でなぞりながら移動すると、加藤はぴくりと反応した。
「…欲しい…、抱きたいよ…」
加藤の耳元に俺は訴える。
「…ッ、…、抱いて……!抱かれたい!」
加藤にぐっと力強く頭を抱き抱えられ、
俺達は再度激しいキスをした。
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