《MUMEI》

(どうしよう、どうしよう)
あの夜―

晶が生身の人間の男と同じようになったと気付いてから。

(どうしよう、どうしよう)

変に意識して、晶を避ける日々が続いていた。


(どうしよう、どうしよう)

庭の散歩も最近していない。


(どうしよう、どうしよう)

先日、とうとう私は唯一触れ合う機会だった『寝るまで手を握る』という行為も、断ってしまった。


晶は変わらず側にいるのに、何だか私は以前のように安心できなくなってしまった。


(私、おかしい)


別に晶が生身でも、襲われる心配はない。

晶は、私の言うことを、必ず聞いてくれる。


だから、晶は今、私に触れない。


私が、嫌がると思うから。

…別に嫌じゃないのに



「…寂しいな」

リィン


私は慌てて口を押さえた。

(だから、おかしいでしょ、その考えは!)


心の中で、自分で自分にツッコミを入れる。


自分で晶を遠ざけておいて、触れてくれないと寂しいなんて…


(おかしい)


一体私はどうしてしまったのだろうか。











変だ、私。


そんな私の気持ちを置き去りにして、季節は移り変わる。

秋から、冬へと。

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