《MUMEI》
お迎え
のんちゃんの話によると、小川君が「出て行け」と言ったんだそうだ・・・


「そもそも、なんでケンカになったん?」


リナさんが聞く。


「過干渉やねん!それがメッチャうっとうしくて嫌や!しかも追い出されたし・・・」


のんちゃんは思い出して腹が立ったのか、ぶすっとした顔になる。




ピンポーン♪




「絶対に小川君よ」


私がそういうと、のんちゃんは小声で


「おらんって言うてな!!!」


と必死に身振り手振りで言った。


ガチャ


ドアを開けると泣きそうな顔をした小川君が案の定いた。


「いきなり遅くにごめん。あの・・・のんちゃん・・・もしかして来てる?」


小川君には申し訳ないけど、のんちゃんを裏切るわけにはいかないよ。
ごめんね!


「のんちゃん?来てないよ。何かあったの?」


嘘つくって嫌だなぁ・・・


「あ、うん・・・ちょっと・・・」


小川君は、さらに泣きそうになっている。


「もし・・・のんちゃんから連絡があったら、俺が探してるって伝えてくれない?」


「うん。分かった」


どうしようか少し悩んで、知ってるくせに聞いてみた。


「ケンカしたの?」


「うん・・・。俺が悪いんだ。ヘヘヘヘ。」


「なんで?」


小川君は言いたいけど、言いたくないみたいな顔をして話し出した。


「俺・・・不安なんだ。のんちゃんに飽きられちゃうんじゃないかって・・・。すっごい不安で、気づいたら束縛してた。」


のんちゃんからアプローチしたのに、小川君が不安な気持ちになるんだ・・・
私なら言い寄られた側なら、常に自信満々だけどなぁ。


「わがままかもしれないけど、側にいて欲しいから彼女の予定にも口だしちゃったりして」


ありゃりゃ。


「結局、言われたよ。嫌だって・・・」


小川君、目が潤んでる・・・


「それで、どうしていいか分からなくて、出てけって言った」


「出てけは余計な一言だったかもね」


小川君はうなずく。


「俺、好きだから心配だって素直に言えなくてさ・・・。ごめんね遅くに。俺、もう少し他あたってみるわ」


じゃ!と小川君が出て行こうとした時、


「嫌じゃないよ!!!」


のんちゃん!?


「嫌じゃないよ全然!だから一緒に帰る・・・」


今の話、筒抜けだよね。こんな小さな部屋じゃ・・・


「迎えにきてくれてありがとう」


のんちゃんは、そそくさと靴を履き小川君と帰っていった。


私の嘘ついた演技って・・・
むなしー(涙

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