《MUMEI》

「晶、久しぶりに庭に行かない?」

リィン


私達は縁側に移動した。

縁側までの歩数は覚えているから、一人で歩ける。

私達がいつ庭に出てもいいように、美幸さんが履物を置いておいてくれてあるから、それを一人で履く。

立ち上がるのも、一人でできる。

歩くのも、今はできる。

晶はただ、それを近くで見守っている。

側にいるのは、銀色の光でわかる。


「ねぇ、晶。…手、繋いでくれる?」

久しぶりにお願いをしたせいか、何だか恥ずかしかった。

リィン


銀色の光が私に近付く。


そっと、晶の手が私に触れて


ゆっくりと、握りしめた。

(やっぱり変だ)


それだけなのに、すごく嬉しくて


ドキドキした。


「ありがとう」

リィン


そして、私達は手を繋いで庭を歩き始めた。

冬の庭には何も落ちていないらしく、晶は何も拾わなかった。


「もう少し、早かったら落ち葉を拾えたわよね」

リィン


去年の秋には、晶は落ち葉を私の手の平に乗せてくれた。


「くすぐったかったけど、嬉しかった」

リィン


晶は私の手の平の上の落ち葉を指でなぞってくれた。

私は、足を止めた。


晶の足も止まる

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