《MUMEI》
走る!走る!走る!
「腕一本分はそなたの勝ちだ、アルトレア。」
言い捨てるハンディングがアルトレアの頬から手を離す。
頬から離した腕には、アルトレアの腕が食い込み、少し赤くなっていた。
「ハンド・・逃げるよ。」
彩詩の声に、アルトレアの腕を振り払う。
「解った。」
地面に転がったままの「エクスカリバー」を拾い上げ、アルトレアの鞘に戻す。
「っと・・でもさ、私もう魔力残ってないんだけど・・」
ハンディングの前に立ち塞がるように立つ、ロアの背から純白の翼が消えていく。
「ぇ・・ロアに運んでもらおうと思ってたのに・・」
彩詩の背からも純白の翼は消えていく。
「・・・あまり我も魔力を使いたくないのだが・・仕方あるまい。ウィンドバック!!」
ゴゥ!!とボンカーとは比べ物にならないほどの強風が周囲の敵を吹き飛ばす。
「コード131・27R・821・586・4YFロード・・跳ぶぞ。」
足元に魔法陣が現れ、周囲の魔力を凌駕するほどの魔力が流れ出す。
テレポが発動、ハンディング達の姿が消えた。

「ぬぉぉぉぉ!!」
ドドドドドドドドド!!
ロシュの疾走は止まらない。
眼前に見えるのはオデッセの部隊・・・馬に乗っているはずの近衛騎士団にぐんぐん近づいている。

「後方から・・・変人が走って来てますが。」
「はぁ?」
コーリア軍を壊走させたオデッセ部隊は速度を緩めることなく、ロゼ達が居るはずの方角へと疾走してる。
騎馬での全速力。
それに追いつく勢いで走って来ている・・
「誰だよ・・守護騎士の誰かか?」
報告してきた騎士に尋ね返す。
「・・・・団長、副団長などでは無いようです。恐らくリーベルに居た冒険者や傭兵の類だと思いますが・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
チラっと後ろを振り返ると、難しい顔をして黙りこむオデッセ。
「どうしましょう?」
「俺に聞くな・・」
「ぬぉぉおおお!!」
ロシュの声が響く。
「アレは放置、いや見なかった事にしろ!!とにかく陛下と合流する事が最優先だ!!」

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