《MUMEI》

「お二人で庭に出るのは久しぶりですね」

美幸さんが食後のお茶を私に手渡しながら口を開いた。

「そうね。 ありがとう」
私は美幸さんからお茶を受け取り、ゆっくりと飲んだ。

「おいしい」

外に出て体が冷えていたから、温かいお茶が、体に染みた。

(そういえば)

昼食のお膳にのっていた物は全部温かかった。

美幸さんの心遣いが嬉しかった。


(そうだ)


「あのね、美幸さん、ちょっと相談があるんだけど…」

「? いいですよ」


「ごめんね、晶。ちょっと、自分の部屋に行っててくれる?」


リィン


(ごめんね)


私は、銀色の光が見えなくなるのを確認すると、美幸さんにお願いをした。


『晶の体の事を…男として、今の生活は大丈夫なのか確認してほしい』

―と。


「別に、いいですけど」


美幸さんはあっさり承諾したが…


「もし、晶君が二回鈴を鳴らしたら、ゆき様はどうするんですか?」


真剣な口調で美幸さんは質問してきた。


それは…


「どうしよう」


私が毎日頭を悩ませていた事だった。


「最近、ゆき様晶君と距離置いてませんか?」


美幸さんは更に質問してきた。

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