《MUMEI》 ◇◆◇ 「─────」 暫くして、神楽は目を覚ました。 辺りは夕暮れ。 茜色の光に照らされ、花は儚げに浮かび上がる。 いつの間に眠ってしまったのだろうと思いつつ、ふと傍らに目をやると、桜の宮がそれに気付いて振り返る。 「御目覚めになられましたか?」 その問いに、こくり、と神楽は頷いた。 そして、掲げられた御簾の向こうを眺める。 そよそよと風が過ぎ、花びらをさらって行った。 申の刻を過ぎると、景色は些か物悲しい風情へと移ろう。 彼方の空を見つめ、神楽は何かを呟いた。 聞き取れない程に微かな声であったが、その言葉が何であったのか、桜の宮には分かっていた。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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