《MUMEI》

◇◆◇

 翌朝。

 神楽が目を覚ましたのは卯の刻だった。

 徐に起き上がると、傍らに目をやる。

 そこには座ったまま眠り込んでいる女房の姿があった。

 桜の宮は一晩中、神楽の側から離れなかったのだ。

 目を覚ました桜の宮は、はっとしたように顔を上げ、神楽に頭を垂れる。

「姫様‥っ。申し訳ございません‥」

 いいえ、と神楽は微笑んだ。

 この姫にとって、側にいてくれるという事は迷惑などでは決してなく、むしろ嬉しいのである。

 はらり、と花びらが落ちる。

 それは空を舞い、風に身を委ねるように寄り添うと、御簾の前を横切り去って行った。

◇◆◇

香しき花の色‐終

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